人は年齢を重ねるにつれて筋肉量が減少します。これは老化現象の一種で、サルコペニア(筋肉減少症)とよばれます。個人差がありますが25歳〜30歳から進行が始まり、生涯を通じて進行します。
また、筋量の減少だけではなく筋肉の質も加齢に伴って低下することがわかっています。一定の筋量あたりの発揮筋力も低下し、さらにそれが速筋繊維が優位になる高閾値の運動で顕著になるため力を素早く発揮する能力も低下します。広背筋・腹筋・膝伸筋群・臀筋群といった抗重力筋において多く見られるため、高齢者の活動能力低下の主な原因となっています。下図は日本人の加齢に伴う全身筋肉量の減少をグラフ化したものです。全身で見た場合35-44歳以降減っていることがわかります。
部位別に見ていくと体幹部は45-54歳から筋肉量の減少が始まります。
対して上肢は35-44歳から減少が始まり、下肢に至っては18-24歳をピークにすぐに減少が始まります。加齢に伴う筋肉量低下は高齢者特有の話ではありません。まだ若いからと油断せずに筋力低下に備える必要があります。
QOL(Quality Of Life:生活の質)を維持するためには、思い通りに動く身体が必要です。中でも姿勢を維持するために重要な前もも(大腿四頭筋)やお尻の筋肉(大臀筋)、体幹部(腹筋群・背筋群)を鍛えることで、活動的な生活を維持することができます。しかし上述した通り下肢は若いうちから筋力低下が始まるため注意が必要です。
幸いにも加齢に伴う筋肉量の減少はレジスタンストレーニングにより緩和したり打ち消すことができるとわかっています。レジスタンストレーニングとは筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動です。レジスタンストレーニングにより高齢者でも筋力と筋量が増加し、階段の登り降りなどの日常生活での一般的な運動能力も劇的に改善します。「段差でつまづきやすい」「ちょっとしたことでバランスを崩して転んでしまった」といった衰えの兆候が見られたらすぐにトレーニングで改善を図りましょう!